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意味が分かると怖い絵たち

投稿日:2017-01-25 更新日:

死の恐怖を感じる時ほど、生きる実感を得られる瞬間はない。
人間存在の皮肉が好奇心を掻き立て、恐怖を塗りこめた絵に人は惹きつけられます。

この本では16世紀から20世紀の西洋名画20作品の隠された恐怖を解説しています。
一見平和な家庭を描いた絵、びくっとするような気味の悪い絵、何を意味しているか分からない不思議な絵、
どれもその絵が描かれた背景(作者自身や当時の国家の有り様を含め)を知ることで、
より興味を増し、「恐怖」という味わいを持って鑑賞することができます。

恐怖の種類は日常のちょっとした悪意から神々や自然の畏怖まで様々ですが、
人間の狂気や卑しさに触れた作品はぞくぞくするものがありますね。

「見捨てられた街」は一見物寂しい街を描いているだけのようですが、
作者が家族とのことでこの街に取り憑かれていた背景を知ると、
建物の様から色使いまですべて不気味に見えてきます。

「エトワール、または舞台の踊り子」は当時の踊り子の立場を知ると悲しい絵に変わりますし、
「マリー・アントワネット最後の肖像」も立場が逆転した作者の悪意が存分に込められており、
どちらも解説付きで見ることで人間がもつ卑しさを楽しめるようになっています。

20作品それぞれに異なる恐怖が隠されており、
カラーの挿絵とともに綴られた解説は分かりやすく面白いです。
思わず鳥肌が立つというほど直接的な怖さはありませんが、
絵を通じて染み込んでくるような人間本来のおぞましさを堪能することができます。

 

僕は普段から美術館に行って芸術を嗜むような人間ではないのですが、
この本に出会ったことで思わぬ西洋絵画の魅力に引き込まれてしまいました。
今度美術館に行くときはこれまでと違った感度で作品を見られそうです。

芸術の予備知識としておすすめの一冊です。

 

↓2013年に文庫化して出版されました。お好きなほうをどうぞ。

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